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――ちびにゃんこ『でも』大切な仲間だし貴重な戦力さ!
小さな姿でもプライドは他のにゃんこと同じくらい大きい。戦闘から基地へ帰る途中でダルターニャの口から出た『でも』という言葉はちびにゃんこをブチギレさせるのに十分すぎた。もちろん、ダルターニャも悪気があった訳ではなく、頭から湯気を出すちびにゃんこに頭を下げたが・・・・・・事態は一向に良くなる気配をみせない。
最初こそ丁寧にあしらっていたものの、剣士たる礼儀を以ってしても噛み付いてくる態度に流石のダルターニャも業を煮やし始めた。遂には『力で勝負にゃ!』と叫ぶちびにゃんこの挑発に仕方なく乗る形で今、風吹く草原で互いの耽々たる視線が交錯している。
「・・・・・・で、本当に僕と決闘するの?」
「当たり前にゃ! ちびにゃんこの恐さを思い知らせてやるにゃ!」
「はいはい、これで気が済んだら一緒に基地に帰ろうね」
ふあぁ・・・・・・と大きな口を隠してアクビをする態度にちびにゃんこの額の血管がブチンッと音を立てて浮かび上がる。
「ちびネコパワーをナメるにゃー!」
土煙をあげて突撃するちびにゃんこを前にダルターニャは微動だにしなかった。その代わり――
ポスンッ
一瞬を跨いでちびにゃんこの進撃が止まる。目に追えぬ速さで抜刀された剣先がその小さな額を優しく捉えていた。押さえつけられて『うにゃー!』と叫ぶちびにゃんこへ軽快な笑い声が降り注ぐ。
「ハハッ君が僕に勝てるわけないだろっ!」
「うにゃぁ、う、動けないにゃ・・・・・・」
「はい、これで僕の勝ち、勝負あったね」
手足をジタバタさせて地面にめり込んでいく滑稽な姿に更に笑い声が――遂に地中に埋まったちびにゃんこは動かなくなった。
ほら一緒に帰ろう、と剣を収めて差し出した右手に返答はいつまで経っても返ってこなかった。
とうとう、地中でそっぽを向き続けた頭の上に大きな溜め息が落ち、直後『また一緒に戦おうね』と言葉を添えて踵を返す音が遠くなっていく――
「ぢ、ぢっぐしょーにゃ・・・・・・」
真っ赤に腫れた目から零れた涙が土の中に浸み込んでいく。悔しさに歯を軋ませていると、共闘したにゃんこ達の談話が地面から突き出た耳に紛れ込んできた。
「しっかし今回はきっつかったにゃー、こぶへい相手に再生産の連続でごり押しだなんてノウキンすぎるにゃー」
「仕方がないにゃーすり抜けなんて一握りの人しかできない荒業だからにゃー」
「ノックバック中の隙を突く秘儀だにゃ、聞いたことだけあるにゃー」
「どんなに強い敵でも内側に入り込まれたら手も足も出ない最高の奥義にゃー、一度は成功してみたいにゃー」
「それにゃぁぁぁぁぁ!」
地面からロケットの如く、一直線に飛び出したちびにゃんこに会話していた二匹の目玉がポーンと飛び出る。
****
――その夜
食事もお風呂も済ませてベッドの上、隣の籠には帽子の三匹が一足先に睡魔に襲われて夢の中。後はサイドテーブルのランプを消すだけ。落ち着いた時間の中でタオルケットに包まったダルターニャは浮かない顔で腕枕をしていた。
――君が僕に勝てるわけないだろっ――
「ちょっと調子に乗りすぎたなぁ・・・・・・明日ネコ缶を持ってキチンと謝りにいこう」
一途な決心の印にコクリと頷いて、そっとランプを消すと暗闇が部屋の中を支配した。暫くしてスー、スーと小さな吐息が枕から漏れ始める。
ネコ達の寝息が木霊するダルターニャの部屋――そこに不気味なほど小さい黒影がドアと床の隙間から忍び込んだ。さささっとベッドへ近づきぴょこん、とダルターニャの足元へ飛び乗る。そのままタオルケットの中に潜り込んで小さな膨らみへと姿を変えると、寝ているダルターニャの足間を縫って進んでいく。
つい三十分前の出来事だった。
****
「縮小魔法?」
「そうにゃネコビマージョ! キミに知らない呪文は無いにゃ!」
「・・・・・・ごめんなさいにゃ、出来たとしても君の大きさ的にこれ以上小さくするのはムリにゃ」
「ボクの部屋にネコ缶千個あるにゃ、勝手に持っていけにゃ」
ネコ缶千個と聞いたネコビマージョの耳がピンッと立つ。
「立てばカンシャク座ればポカン、歩く姿はゴミのよう・・・・・・アブラケバブにゃー!」
ネコビマージョの真下に浮き出た魔方陣から放たれる衝撃波にちびにゃんこが吹っ飛ばされる。壁にベシャンと叩きつけられて餅みたいにへばり付くちびにゃんこをホウキに乗って見る眼は赤かった。
「三十分後に効果が発動、効力継続はおおよそ三時間。散財した代償を賄うだけの行いに期待するにゃ」
「お、恩に着るにゃ・・・・・・」
****
――体も洗って歯も磨いて・・・・・・準備万端だにゃ――
ネコビマージョの呪文の効果がタオルケットの中で発動する・・・・・・ダルターニャへと近づく膨らみがピンクの光を放ってどんどん小さくなっていく。股の間に差し掛かった時、ついに膨らみが消え、ベッドの上は疲れきって熟睡する剣士の吐息だけが静寂の中で揺蕩っていた。
この瞬間、ちびにゃんこの行方を知る者は誰一匹としていなくなった。
****
「確かここらへん・・・・・・うにゃっ」
ダルターニャの匂いに支配されたタオルケットの中で、ちびにゃんこが何かにめり込んだ。
「足にしてはミョーな感触、まさか・・・・・・」
そのまさかだった。柔らかくふわふわな感触で包み込むソレを前にして今一度、顔を寄せる。目の前でグニグニと動く膨らみが『あの部分』と確信すると上によじ登った。さっきのお返しにゃ、とばかりに思いっきりボスン、ボスンと跳ねてみる。しかし当の攻撃されている本人は一切気付くことなく寝息を立てるばかり。
「最終確認・・・・・・完全に夢の中だにゃ」
ぴょんっと飛び降りてすぐ後ろを振り返ると・・・・・・膨らみの上に鎮座するもう一つの大きく柔かな物体、その中央を通る一本の線が目の前に――
――とうとう見つけたにゃ。これがダルターニャの――
ネコビマージョにお願いした時より覚悟は出来ている。ダルターニャの尖ったソレの先端を前にして今一度、大きく深呼吸をした。
「それではダルターニャ、お邪魔するにゃ」
左右に開かれた一本の線の温もりに誘われながら顔を近づける。決して入り口とは呼べぬ、その鈴口にそのまま頭を埋めた。
「んんっ・・・・・・」
寝ているはずのダルターニャの眉間に皺が寄る。ちびにゃんこのバタつく小さな手足に合わせて頭を咥える鈴口が拡がっていく。目を醒ます間も無いほどあっという間だった。その小さな身体は、まるで呑み込まれるかのようにダルターニャのソレの中へと沈んでいき・・・・・・
にゅぷんっ
とうとう全身を飲み込んでしまった。元の一本の線へと姿を変えた鈴口の向こう側でちびにゃんこの目が赤く光る。
「本当におちんちんの中に入っちゃったにゃ・・・・・・」
息苦しいほど暗く狭いトンネル――意外にも柔らかいその肉壁は両手で容易に拡げられた。
――この奥に行ければ――
全身をムギュゥ、と包み込む細道を前にしてちびにゃんこの鼓動は早くなっていく。
ベッドの上では相変わらず呻き声が漏れ続けていた。無意識のうちに体をくねらせては自身のソレに腕を伸ばして不快感を紛らわそうとしている。ちびにゃんこの分、大きくなった裏筋の膨らみは徐々に根元へと近づいていき・・・・・・とうとうダルターニャの身体の中へと姿を消した。
そんなダルターニャの体内に忍び込むちびにゃんこの足取りは止まらない。昇ったり降ったり、狭い肉壁を両手で拡げながら更に奥へ奥へと・・・・・・
途端、歩みが止まる。鈴口から入った頃から見たどの肉壁よりも小さく、そのキュっとした小さな窄みに目が輝く。
「この先が、もしかして・・・・・・」
ちびにゃんこは窄みに力いっぱい頭を押し付けた。最初こそ窄みはちびにゃんこの侵入を拒み続けたが、頭が内部へ入ると先の抵抗が嘘の様にちびにゃんこの身体を受け入れた。そして、半分ほど身体が入ったその時・・・・・・
ぎゅむんっ
窄みの方からちびにゃんこを飲み込んで奥の部屋へと誘った。いきなり目前に迫る溶液の大海の中、息を止めて必死に水面を目指す・・・・・・
「ぷはぁ! ここがダルターニャの・・・・・・」
狭苦しい尿道内から一転して辿り着いた部屋は想像以上に広かった。達成感のあまりに万歳三唱の後、ちゃぷちゃぷと泳ぎ回るちびにゃんこ。背泳ぎしながらボフンッとぶつかった肉壁は柔らかく、体内にいることを改めて知らさせる。
「それじゃぁ・・・・・・反撃開始にゃ」
ちびにゃんこの目がキラリと光った。ワンコを攻撃するように『はむっ』とその肉壁に甘噛みがお見舞いされる。本当に柔らかな甘噛みだった。
「がはぁッ!」
まどろみに包まれた夢から一転して最悪の現実へと目覚めさせるには余りある衝撃だった。瞠目して自身の股間を見詰めるダルターニャに間髪を入れず更に追撃がお見舞いされる。全身を駆け巡る痺れに空いたままの口から涎が垂れて腰が天井へと昇る。
「ぼ、僕の身体、一体――ッ!?」
「うにゃ、どうしたにゃ・・・・・・」
自身ですら状況を把握できないダルターニャに説明なんて無理そのもの。
「君たちは眠っていてくれ!!」
すぐさま最低限の格好をして部屋を飛び出した。義手で股間を押さえながら向かった先はただ一つ――
「ねこ医師ッ! ねこ医起きてくれ!!」
力任せの下品なノックに『ねこ医師のお部屋 兼 保健室』と書かれた表札が揺れる。間を置いて部屋の明かりがドアから漏れた。
「ふにゃぁ~・・・・・・どうしたにゃ、こんな夜中に」
「身体がヘンなんだよ! 内側ら叩かれるような痛みが出たんだ!!」
「どの辺りにゃ?」
「その、えっと・・・・・・お股のちょっと上辺り」
「まーたちびネコでも飲み込んだかにゃ・・・・・・とりあえずレントゲン撮ってみるにゃ」
ぽりぽりと頭を掻いて出た言葉がレントゲン――パジャマ姿から白衣に着替えたねこ医師に奥の診察室へと誘われる。
「それじゃあ撮るにゃ。息を吸ってー・・・・・・ふあぁ」
――それ胸部の検査だろ――だなんて言えない。夜中に叩き起こして診察してもらっているのだから。
バシャリと股間を照らしたライトが光る。出てきた写真を細目でジーッと見ると『またか』という表情で頷いた。
「やっぱり、ちびネコの影があるにゃ。今度は白玉じゃなくてお餅かと思ったかにゃ、ちょうど小腸の奥にさしかかって・・・・・・うにゃ!?」
寝ぼけ眼から一転、丸い目になって写真を見つめ直す。額からは沢山の汗がタラタラと――場の空気が一転したのを察したダルターニャが不安げに尋ねる。
「な、何があったのさ」
「ダルターニャ、落ち着いて聞くにゃ。ちびネコは確かに君の中にいるにゃ。けれどそのにゃんこがいる所は・・・・・・キミの膀胱の中だにゃ」
「ぼ、膀胱だって!?」
ダルターニャの両腕がねこ医師の胸倉に伸びると揺さぶり攻撃が始まった。
「何でだよ!? どうしてそんな場所にいるのさ! 在り得ないだろ!! っていうかどうやって入ったんだ!? にゃんこ軍団でそんな小さなにゃんこは居ないだろ!? だいたい僕の何処から――ん゛ぎいぃ!!」
不意に襲った衝撃が両手を股間へと伸ばさせる。不可抗力で床に落ちるねこ医師よりもダルターニャの顔は驚いていた。自身の意思とは裏腹に手の間から徐々に広がるシミが湯気を出して震える両足の太ももを伝っていく・・・・・・あっ、あっとか細い声を出しながら必死に押さえるも虚しく、自身で作り上げた湯気の上にぺたりと女座りをするダルターニャの目尻には一点の涙が・・・・・・
「とりあえず診察台の上に乗るにゃ」
****
これ飲んで落ち着くにゃ、と渡されたのはネコビタンC・・・・・・
無言で飲み干すダルターニャにタオルケットが掛けられ、診察台の上で綺麗になったお腹に聴診器が当てられる。
「だいぶ暴れているにゃ。君のお腹から『攻撃音』が聞こえるにゃ」
「つまり僕、攻撃されているってこと?」
「そうみたいだにゃ。とりあえず中を覗かない限りは何とも言えないにゃ」
「え、中を覗くって・・・・・・」
「キミのちんちんから内視鏡を入れて膀胱の中を覗かせてもらうにゃ」
「じょ、冗談じゃない!! ちん・・・・・・ちんちんからだって!?」
「そうにゃ、無菌の内視鏡キットがあるから丁度良い機会だにゃ」
「待ってくれ、他に方法あるんだろ!?」
「無いにゃ」
「絶対にその方法じゃなきゃダメなのか!?」
「開腹してお腹を十文字に切り刻まれるのが好きならそうしてやってもいいにゃ」
「そ、そんな・・・・・・」
「痛いかどうかは気持ち次第、私の医療に間違いは無いにゃ。ひとまず膀胱が空っぽになったのは好都合だにゃーくふふ。たっぷり潤滑剤を塗ってあげるから安心するにゃ」
一旦、診察室の外へ出たねこ医師が青緑色の術衣とマスクを付けて戻ってくる。両手にはさっき話していた内視鏡が――潤滑剤を塗られて黒く光るソレを見てダルターニャは唾をゴクリと飲み込んだ。
「・・・・・・準備完了。覚悟はいいかにゃ」
「そ、それを本当に入れるの!?」
「ちょっと太いくらいだから安心するにゃ。まず手始めに・・・・・・」
「・・・・・・うわあっ!」
「どうしたにゃ、触られただけで大声あげるんじゃないにゃ、立派な剣士ならこれくらいガマンするにゃ」
「やめっ、そ、そんなに先っぽ強く握らな――ッ」
「じっとするにゃ、狙いが定まらないにゃ。それじゃぁ入れるにゃー」
「・・・・・・やっぱり怖い! や、やめてくれっ!!」
「何してるにゃ、こら暴れるんじゃないにゃ! これじゃ入れられ・・・・・・あっ」
潤滑剤が付着した手の中で抗ったせいだとしか言いようが無い。はからずも刺激を受けたせいでねこ医師の左手の中でどんどんと膨らみを帯びていく。意思と反して妖しい光を帯びながら猛き主張を露にするダルターニャのモノに呆れた視線が向けられる。
「ごめん・・・・・・」
「まぁ、その、元気なのは健康な証拠にゃ。けれど真面目に医療処置をしようとしていることを忘れないでほしいにゃ」
「本当にごめん・・・・・・」
「おかげで入り口、もとい先っぽの穴も大きくなって入れやすくなったにゃ、入れる距離は倍になったけれど・・・・・・ちょっとにゅぷっとするにゃー」
「ひぎぃっ・・・・・・」
「ゆっくり、ゆーっくりにゃー・・・・・・」
「――んぎいぃいいっ、かはぁッ!」
「・・・・・・入ったにゃ。モニターを見てみるにゃ。これがキミの尿道だにゃ」
「これが僕の・・・・・・」
「そうだにゃ。この先にちびネコがいるんだにゃ」
「何で、何で僕のちんちんの中に・・・・・・」
「確かめる為にも、どんどん内視鏡を入れていくにゃ」
自身のモノの中へズリズリと入っていく感触に合わせて画面の中でピンクの肉壁がモニターに迫る。どんどん奥へ入っていく不快な感触にダルターニャは手を胸に寄せて震えるしかなかった。不意に視線を自分の股へと落とす。ねこ医師が握る自分のモノの先から内視鏡の深部を示すマークが次々と飲み込まれていって・・・・・・何処を見ても地獄な空間に目線が再び己の尿道内を映し出すモニターへと帰っていく・・・・・・入っていく感触が陰茎から体内に差し掛かって暫くすると同じ映像しか流されなかったモニターに小さな窄みが映し出された。
「む、とうとう着いたにゃ。ちょっとぐにぃとするけれどガマンするにゃ」
「い、いぎぃ・・・・・・」
「そーっと入れるにゃー、そーっと・・・・・・」
「・・・・・・んぃ、あっ、あぐぅっ!!」
「ガマンするにゃ。そのままそのまま・・・・・・」
「・・・・・・んやぁあああああ!」
「無事に膀胱に入ったにゃ。さて、ここからが本番にゃ。ちびネコを探さして・・・・・・目の前に居たにゃ」
「え゛!?」
「うにゃ~ダルターニャの膀胱おいしいにゃ~」
モニターに映し出された映像の奥には白い塊が――恍惚の表情を浮かべて肉壁を口に含んでいた。ねこ医師の血管がブチブチと浮かび上がる。何故か装着されているマイクに向かってねこ医師の怒声が診察室に轟いた。
「てっめぇー何してんだにゃあー!?」
「う゛! バ、バレたにゃぁ!?」
「ダルターニャの膀胱内でバカンスとは良い度胸にゃぁ! この腐れ変態ちびネコがぁ!」
「ち、違うにゃっ、ダルターニャのことが好きでちんちんに入ったじゃないんだからにゃっ!」
「君は今日、僕と戦った・・・・・・どうして僕のこんな恥ずかしい場所に入ったのさ!?」
「決まっているにゃ。君に仕返しする為にゃ、ダルターニャ。決闘の屈辱を百倍にして返してやるにゃ! くらえーちびネコパーンチ、ちびネコキーック!!」
「んぎぅ! かっはぁ!!」
「どうにゃ、ここなら手も足も出ない下剤も利かない、すり抜け攻撃し放題だにゃ!!」
「わ、わかった、君の執念は伝わったよ、降参だ。もうやめてくれ・・・・・・」
「あっかんべーにゃ、そんなので許すほど甘くないにゃ」
「ね、ねこ医師、どうしよう!?」
「術式変更、これよりメイクマイデイ方式として進めるにゃ・・・・・・強制摘出にゃ!」
内視鏡の先より小さなアームがちびにゃんこ目掛けて飛び出した。一瞬の間を見据えて掠めるちびにゃんこの胴体を通り過ぎたアームが膀胱内に激突するとダルターニャの腰が浮いた。
「あ゛ぎうぅ!」
「避けるんじゃないにゃ、このっ! このっ!」
「や、やめてくれっ! 僕の膀胱の中でそんなに振り回さないでくれ!!」
「うるさいにゃー! こんな外道にゃんこはさっさと捕まえて徹底的なお仕置きが必要だにゃー!」
「あっ、あ゛ぁっ――いや゛あ゛あ゛あぁッ!!」
内視鏡が鈴口から膀胱の中へ駆け込むように滑り込んでいき診察室に悲鳴が響き渡る。加えて内側からボコンッボコンッと動き回る感触にダルターニャは歯を食いしばって声を漏らす。自分のお腹の中でちびにゃんこと内視鏡が暴れまくっている・・・・・・狂乱する医者と体内で逃げ回るちびネコが繰り広げる戦闘は両者隙の無い読みと動きで一向に決着が付く気配が無い・・・・・・
――オペ開始のタイマーが一時間を突破した――
「も、もうやめ・・・・・・体力が持たない」
ダルターニャは無論、ねこ医師の体力も限界に近かった。医療帽から湯気を立ち込めて内視鏡を操る左手は微かに震えている。
「ぜーっ、ぜーっ、す、すばしっこいにゃんこだにゃ・・・・・・」
「ふふん、ちびにゃんこの瞬発力をナメてもらっちゃ困るにゃ」
「けれどもうおしまいにゃ。次で決着を付けるにゃ」
「そんなミエ張っても通じないにゃ!」
「暴れまわっているせいで気付いていない君に教えてやるにゃ。周りを見てみるにゃ」
「にゃ?」
逃げ回ることに夢中になっていたちびにゃんこの周りには再び溶液が――しかもその水位は腰元にまで達していた。
「にゃにゃっ、これは!?」
「内視鏡処置をする前にダルターニャにネコビタンを与えておいたにゃ。ネコビタンの注意書きを読んだことはあるかにゃ?」
「――ハッ!」
「強力なネコビタンほどその作用は強い。ネコビタンの利尿作用でプールと化したダルターニャの膀胱内で君が飛び跳ねる瞬発力はもう無いにゃ」
「し、しまったにゃ!」
膀胱の中で逃げ場を探すと見つけたのは二つの溶液が染み出る小さな窪み――その中の一つに頭を突っ込もうとするちびにゃんこの背後をねこ医師が捕らえた。
「そんなところに潜れるわけないだろにゃ!」
「うにゃあぃ!」
すかさずアームがガシリッとちびにゃんこの胴体を掴みこむ。ねこ医師の目がキラリと光ってダルターニャの中から内視鏡が引き抜かれていく・・・・・・
「ひっ、ひぎいいぃぃぃッ! も、もっとゆっくりッ・・・・・・!」
「超激レアのくせしてこれくらいも我慢できないのかにゃぁあ?!」
「あがっ、あがあぁッ!! じ、死ぬっ! 死ぬがらやめでえええぇぇ!」
ダルターニャの陰茎が小刻みに震えだす。モニターの中では引きずり出されまいと尿道内で暴れるちびにゃんこが――ちびにゃんこを引き連れながら恐ろしい勢いで飲み込んだ分の内視鏡が鈴口から飛び出していく。
「ながでぇっ! ぢびにゃんごがあばえでるッ! い゛やだっ、いや゛だぁっ!!」
「もう少しの辛抱にゃ、頑張れにゃ!!」
「あぎぇゃぁぅッ! ぢんぢんごわれる! ごわッ! ごわれる゛う゛うぅっーッ!!」
診察台のシーツを握り締め、腰を浮かせるダルターニャの両足が痙攣し始める。苦悶の表情で下品な絶叫を漏らし続けるダルターニャから、ちびにゃんこがとうとう・・・・・・
ズリュリュッ・・・・・・――ニュポンッ!
盛大に潮を吹く鈴口の一本線から内視鏡と共に体外へ・・・・・・外へ出てもアームにつかまれたままパタパタと暴れるちびにゃんこにねこ医師がふーっと溜め息をつく。
「やっと取れたにゃ。大手術だったにゃ。君もお疲れさまにゃ、ダルター・・・・・・」
あれほど暴れられたのだから仕方が無い。その姿は見るに忍びなかった。
股間から湯気が立ち込む、その開いた鈴口より拡がっていくシミが診察台の上を支配していく。
「ぜはぁー、ちびにゃんこの強さがわかったかにゃ!?」
鼻水と涙に失禁、英傑とは決して言いがたい自身の姿――そう悟った瞬間、頬が一層赤らみを帯びていく・・・・・・――ちんちんからにゃんこが入り込んで、内視鏡を入れられて、汚い声で叫んで、挙句の果てにおったてて・・・・・・誰にも合わす顔が無い――
苦痛よりも羞恥心に囚われてすすり泣くダルターニャの目からは涙が零れ落ち、左手で覆い隠した顔でコクリと頷くしかなかった。
敵城を陥落させたかの如く、未だガクガクと震えるその両足に、ちびにゃんこの脳裏に過ぎったのは『完全勝利』の四文字・・・・・・
「ダ、ダルターニャに勝った――ッ! やったにゃー!!」
内視鏡のアームからポーンとロケットのように飛び出した満面の笑みのちびにゃんこをねこ医師がパシッとキャッチする。額に黒い線を落とてちびにゃんこの前にずいっと忍び寄る細い目線は明らかに殺意が籠もっていた。
「私の貴重な睡眠時間を削った分、後できちんと働いてもらうにゃー」
「しょ、承知しましたにゃ・・・・・・」
****
「にゃんこTVー基地内速報スペシャル!」
ねこ基地内のリビングルームにある大型スクリーンにねこせんせいと字幕テロップが大きく映し出される。軽快なBGMに談話しているにゃんこ達が一斉にスクリーンの方へと顔を向けた。
「いやー参ったにゃー・・・・・・ネコ基地内で大変な事件が発生したにゃ。昨晩、ダルターニャがちびにゃんこに膀胱を咥えられ、殴る蹴るの傷害を負ったにゃ。 調べによると連行されたちびにゃんこは馬鹿にされたてついカッとなってしてしまった、と供述しているにゃ。ダルターニャも悪気が無かったとはいえ剣士として大変無礼なことをした、と話しているにゃ。そんな中、ダルターニャから貰ったネコ缶の上ではしゃいでいるちびにゃんこの写真をゲット! 二匹は無事に仲直りしたみたいにゃ。それにしても小さいとはいえ、ちびにゃんこの潜在能力は恐ろしいにゃー・・・・・・次のニュースにゃ。ミーニャがフェロモン門で・・・・・・」
「あの漢字、何て読むにゃ?」
「ぼうこう、くわえると読むにゃ、けれどあれはミステロップだにゃー、『暴行』『加える』が正しい表記にゃ、あれだと身体の器官になってしまうにゃ」
「ねこせんせいもドジだにゃー『膀胱』を『咥える』だなんてできるわけないにゃーにゃはははは」
「できちゃうんだよなぁ・・・・・・」
リビングの奥でうな垂れるダルターニャが股間をそっと両手で押さえた。
後ろを通りかかったソウルズ達がその英傑らしからぬ、しょんぼりした姿を見て何やらヒソヒソと話し始める。
「しっかしあのダルターニャがコテンパンにされるとはねぇーなっさけねぇにゃぁ」
「そんなこと言っちゃダメだって。きっと油断してたんだよきっと」
「タヌキ君の言うとおりにゃ。誰だって油断ってものがあるもんだにゃ」
「油断することが間違いだっつってんだにゃ。ゾンビ相手に地中に潜られたら最後、僕はいつだって真剣なのにゃ」
「さるかに君、良いこというねー。どうだい、子役なんか辞めて私達の組織に入らないかい?」
「それならカオスムーンの先導役として抜擢するのが適役じゃないかしら?」
「いーや僕達キンレンジャーの一員として活躍するのが一番だにゃ!」
「よすにゃーさるかに君困っているにゃ。たまには海辺でも一緒に散歩しようにゃー」
「うらしまお前、こんないたいけない子供にまで手ェだすのかよ、俺っちよりよっぽど道外しているじゃねぇか」
「ぼ、ぼくはそんなつもりで言ったんじゃ――ッ!」
「はいはい隠れショタコンお疲れ。で、もしちびにゃんこが襲ってきたらどうするよ、俺っちならこのピーチジャスティスでドカーン、だけれどなぁ」
「射程を活かして、の方がいいんじゃないかにゃ、その点は先に進化したコスモはどう思うにゃ?」
「あの小ささなら移動速度が遅い点を見据えて超射程からの一撃が定石だね、銀河の英雄が言うから間違いない! けれどさ」
「けれど?」
「油断したにしろ、していないにしろ、ちびにゃんこですら相手にできない英雄にはなりたくないなぁ・・・・・・」
「ぷふ、そんなヘッポコヒーローは第一話で最終回にゃー」
「にゃはははははは!」
ソウルズたちの笑い声が食堂を通り過ぎていった。その近くに置かれた机の『プリンアラモード』がガタガタと震えだす。
「ちびにゃんこ『ですら』・・・・・・ッ!」
ホイップクリームまみれになってオヤツを満喫するちびにゃんこの赤く光る目がコスモに向けられた。
次回『コスモ死す』ぜってぇ見てくれよな!
おしまい
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